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2010/04/15

フランス演劇「西埠頭」【from Tokyo】

Qoui-main.gifフランスと日本のプライドがぶつかり合う、「異種格闘技戦」のような作品

 4月22日(木)より、新国立劇場(東京・初台)にて新国立劇場 演劇研修所 修了生のためのサポートステージ「西埠頭 Quai Ouest」が上演された。「西埠頭」といえば、フランスを代表する劇作家ベルナール=マリ・コルテス Bernard-Marie Koltèsの代表作。今回、コルテス氏の没後20年の特別企画そして、日本の新国立劇場との共同制作として公演が実現することになった。
 当作品の見所は、まず、日仏の新しいコラボレーションが実現した点であろう。過去フランス政府は、海外公演にあたって、言葉もスタッフもフランス流にこだわってきた。しかし、今回は方針を転換。新しい試みとして、日本語と日本人スタッフによるプログラムが組まれた。その背景には、自己流にこだわるよりも、確実に相手国にフランスのエスプリを伝え切る、という文化大国としての使命感があった。

 この重責を託されたのが、演出家のモイーズ・トゥーレMoïse Touré氏(写真上)である。トゥーレ氏は、フランスの国立劇場で活躍する演出家であり、その実力は本国でも高く評価されている。上演を控え、トゥーレ氏は次のように抱負を語る。「日本とフランスでは、言葉も違えば、文化も違います。フランス人にとって演劇は生活の一部ですが、日本人の場合、そこまでは演劇を観る習慣がありません。しかし、美意識や感情などに国境はない、というのが私の考えです。習慣の違いを楽しみながらも、『心』を通して皆様にメッセージを伝えたいと思っています」。実際、振り付けの現場では、トゥーレ氏と俳優による言葉を越えた、体当たりな会話が繰り広げられている。若手もベテランも関係なく、時には声を張り上げ、また時には引っ張りまわし、トゥーレ氏は俳優たちと対話する。その様子は、まさに"ぶつかり稽古"。現場では「異文化交流」というよりは「異種格闘技」のような激しいやりとりが行われたのである。

コルテスが世界放浪の果てにたどりついた境地

 作品のもうひとつの見所は、何といっても作品に込められたコルテスのメッセージであろう。格差、個人主義、暴力、排除―。作品には人間の生々しい欲望が渦巻き、見るものにさまざまな不条理を見せつける。それは、まるで現在の日本社会が抱える闇を映し出しているかのようでもある。
 トゥーレ氏が語る。「コルテスは作品を通して私たちに訴えます。『あなたたちはヒューマニズムやデモクラシーを鼻にかけているが、そんなものは失敗だ。あなたがたは獣のように殺し合いながら、ヒューマ二ティの境地に至ったように思い込んでいる、野蛮人なのだ』と」。
 生涯、アフリカや南米など、辺境への放浪に明け暮れたコルテス。旅の果てに見た現代世界は、さぞ欺瞞に満ちていたに違いない。  撮影/天野裕子、文/竹内和司、通訳/おおいさやか


(写真上)演出家のモイーズ・トゥーレ氏。コートジボワール生まれのフランス人。
(写真中段)とにかく俳優を引っ張りまわすトゥーレ氏。まさに役者と演出家の戦いである。
(写真下)俳優陣には、オーディションで選ばれた新国立劇場 演劇研修所の修了生も参加。この中から、日本の演劇界を背負って立つスターが生まれるかも。

 

 


■概要
新国立劇場 演劇研修所 修了生のためのサポートステージ
「西埠頭 Quai Ouest」
公演日程:終了しました
 主催:新国立劇場、劇団イナシュべ
後援:
東京日仏学院、フランス大使館ほか
お問合せ:新国立劇場ボックスオフィス(03-5352-9999)

 

■作品
<あらすじ>ここはニューヨークを思わせる湾岸都市。文明生活からは打ち捨てられ、ネズミやゴキブリの大群に占拠された倉庫に住み付く移民の一家がいる。その埠頭の一角に、ある夜、場違いなブルジュワの男女が車で乗りつけた。この2人から金品を巻き上げようとする一家だったが物語は思わぬ方向に・・・

作:ベルナール=マリ・コルテス  翻訳:佐伯隆幸  演出:モイーズ・トゥーレ  監修:鵜山仁
出演:世古陽丸、日下由美、北川響、古川龍太、滝香織、サミュエル・フォー、津田真澄、小林勝也、窪田壮史、小泉真希、高島玲、二木咲子、宇井晴雄、角野哲郎、西原康彰、三輪冬子

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